19.『舟を編む』 バウスシアター

IMAO2013-04-15

原作は未読ですが、非常に良く出来た作品。手堅く細かい演出を感じました。
キャスティングが素晴らしいです。松田龍平宮崎あおいオダギリジョー小林薫加藤剛八千草薫黒木華(くろきはる)、誰もが収まるべき所に巧く収まっている。スゴく良い意味で・・個人的にはオダギリジョーの芝居はギリギリだけど・・好きでした。黒木華はこれからドンドン出てくる人ですね。

17.『グッバイ・ファーストラブ』 イメージフォーラム

IMAO2013-04-12

フレンチ・フューメイル・ニューウェーブ」というフランスの女性監督(元女優の監督)特集の中の1本。
予告編で一番気になったこの作品を一番最初に観ましたが、今年の個人的ベストの1本でもあると同時に、「女の子フェチ映画」としては僕の中で10本の映画に入る傑作!ブノワ・ジャコーの『シングル・ガール』等と同じ系譜だと思うけど、フランス映画にはこういうジャンルが確実にある。
この映画に関して言うと、主演のローラ・クレトンの魅力に尽きる訳で、この娘をキャスティング出来た、という事で勝負あったという感じがする。でも映画って、やっぱりそれだけでは良い作品にならない。監督のミア・ハンセン・ラブ、オリヴィエ・アセイヤスと事実婚しているだけあって、やはり相当な実力がある事が良く判りました。地味だけど良い演出。ラストの帽子とかホントに気が利いてる終り方だな〜と感心しました。それにしても映画を観ていて、こんなに幸福な時間を味わったのは久しぶり。

10.『人生はビギナーズ』 WOWOW録画

IMAO2013-03-27

ポッと時間が空いたので録画しておいたこの映画を観る。日本語の題名はちょっと判り難いと思うけど、面白かった。これといった大きな出来事がない物語なのに見せる。主役のユアン・マクレガーも良いが、競演のメラニー・ロランは凄く良かった。『イングロリアス・バスターズ』に出ていたそうだが、そういえば・・といった程度にしか覚えていない。大体タランティーノの映画は良い意味でも悪い意味でも残らないのだ。でもメラニー・ロラン自身、監督もする才能がある女優らしい。この映画の彼女を観て、少し恋愛したくなりました(笑)
監督自身が書いているコメントがこの映画を一番良く表しているので、以下抜粋。

「僕が『Beginners』で最も表現したかったことは、人生の冒険についてであり、自分の殻を破ることについてだ。この映画は、病気や死というものを描いているが、始まりの話であり、変化の話であり、どんなに深刻な時でも心から人生を楽しめるものだという話だ。」

こういうさり気ない映画が一番難しいと思う。メイキングなどを見ると撮影はデジタルだが、それを感じさせない巧さを感じた。やはりツールは使い手次第だ。

9.『愛、アムール』 バウスシアター

IMAO2013-03-11

明日撮影なので、気合いを入れるために(?)1本観ておく。これは素晴らしいが、まったく参考にならないな。でもミヒャエル・ハネケのシンプルでいて厳しい演出には打たれた。最初妻の異常に気付くシーンでの、水道の使い方!徐々に悪化してゆく妻の表情。その全てが計算し尽くされている感じがする。そこがまた凄い!観た後にドッと疲れるけれどもそれだけに忘れられない映画ではある。
ジャン・ルイ・トランティニャンとエマニュエル・リヴァが本当に素晴らしい。ジャン・ルイ・トランティニャンは映画史に残る名優だが、まだ健在だったので素直に嬉しい。エマニュエル・リヴァは僕にとってはフィリップ・ガレルの『自由、夜』の女優さんだが、ある意味女優として最高の演技を見せている。その勇気に感心した。

6.『人間蒸発』 かもめ座

IMAO2013-02-11

レンタルスペース・ニューロカフェが行なっている「真眼塾」というワークショップから派生した上映会。この映画の撮影を担当した石黒健治氏と録音兼製作進行を担当した武重邦夫氏とのトークショーがあり、非常に興味深く観た。DVD上映だったのが、ちょっと残念。確かに今のプロジェクターはかなり精度が高いが、出来ればこういう映画は16ミリでも良いからフィルムで観たい!
1967年製作だから、日本でもヌーベル・ヴァーグの影響下にあって、フィクションの新しい形態が模索されていた時代だ。今村昌平もこの当時フィクションに疑問を感じていて、テレビのドキュメンタリーとしての企画に乗った形でスタートしたという事らしい。(本来スチールカメラマンの石黒氏がこの映画に参加したのも、映画の形態をぶち壊したい、という今村昌平の意図があったらしい)だが、今村は最初はあまり乗り気ではなかったらしく、撮ってゆくウチにやはりフィクションとしての要素がこの映画には必要ではないか?という自問自答に悩み、途中2日ほど監督自身が「蒸発」したりして・・という裏話が面白かった。
結局映画とか映像というのはどこまではフィクションで、どこまでがドキュメンタリーか?というのな非常に怪しい所である。カメラを向けた時点で、それはもう「日常」ではなくなってしまう訳で、どんな映像も編集された時点で、それはフィクションだとも言えるだろう。だが、フィルムに定着しているモノは宇宙で一瞬しか起こりえなかった事である、という意味では全ての実写はドキュメンタリーだとも言える。問題は今、カメラがこれだけ氾濫している世の中で、新しい映像の在り方が問われている事だと思う。そんな事を再認識させられるのも、この作品が未だに強烈な説得力を持っている証拠に他ならない。
写真はトークショー中の武重邦夫氏(左)と石黒健治氏(右)

(再)『雪の断章 -情熱-』 ユーロスペース

IMAO2013-01-25

行くかどうか迷っていたが、行って良かった。ソフト化されていない事もあって、僕も観たのは公開時以来だから28年ぶり!?いや〜歳が判るね。意外と覚えているもので、やはり若い時に観た映画は忘れない。上映後に主演の榎木孝明氏と榎戸耕史監督(当時、助監督として相米の右腕的存在だった)の対談があり、非常に面白かった。
出だしの13分にも及ぶワンシーンワンカットのリハーサルに一週間。やっと撮り終わったと思ったらその後リテイクがあった事。その為にかなり予算が逼迫して、相米はかなりのシーンを捨てた事。成瀬巳喜男『乱れる』を意識していて、スタッフ・キャスト全員で鑑賞した事など・・どれも今ではありえない様な話ではある。でもやはりこの人は良い意味で狂っている。これだけ体力がいる演出をしていたら早死にするよな〜、と今更ながら思った。そしてやはりこの人の映画は映画館で観るべき映画なのだ、とも。帰りに榎木孝明氏にすれちがったので、「僕この映画観たの高校生の時でした」と思わず声かけてしまった。
写真は家に帰って探したら出て来たパンフレット。物持ちが良いというか何というか・・・

3.『テッド』 吉祥寺プラザ

IMAO2013-01-18

小さい頃に貰ったぬいぐるみに魂が宿っていて、それがそのままアダルト・チルドレンの象徴となっている、という設定は面白い。彼女に自分をとるのか?ぬいぐるみをとるのか?と迫られ、大人になる事をとろうとした主人公だったが・・という話はあまりにもリアルな部分が重なり過ぎて、途中からあまり笑えなくなってきた。
去年の『ヤング≒アダルト』にしてもそうだが、アダルト・チルドレンの問題はある程度成熟した社会では、共通する悩みなのかもしれない。なのでラストに関してはちょっとアメリカ映画的にまとめ過ぎている気がする。そんなに深刻にしたくないのは判るのだが。そういう意味では『ヤング≒アダルト』のラストは新しかったのかもしれない。何しろあのラストは主人公がまったく変化しない!というアメリカ映画の脚本としては禁じ手が使われているのだから・・あれはアンチ・アメリカ映画なんだね。