24.『預言者』 早稲田松竹

IMAO2013-04-26

今日までと知って慌てて早稲田松竹へ。学生時代からホントにココにはお世話になっています(笑)
ジャック・オディアールは『リード・マイ・リップス』が好きで、何度も観ているが、今公開している『君と歩く世界』も良い映画。とはいえ、あれはマリオン・コティアールのラブ・ストーリーみたいな売り方をしているが、そんな単純な話じゃないし、オディアールの感心はそこにはないと思う。じゃあドコにあるの?という事だが、この人は「肉体」にこそ感心があるのだと思う。
刑務所に入った青年が、刑務所内のドンに目をつけられる。刑務所内ではその男が実質権力を握っていて、相当好き勝手やっている。出来ないのは刑務所の出入りくらい。で、彼の命令に逆らう事が出来ずに青年は、刑務所内のある受刑者を殺す事になるのだが・・という話の導入だが、この殺すシーンが本当に怖い!心臓弱い人には絶対にオススメ出来ない。でもその「痛み」とか「匂い」とかが、こびりつく様に記憶に残る。手触り感というか、ヌメヌメした感じが今でも残っていて、そこがこの人の映画の魅力にもなっている。
考えてみれば『君と歩く世界』ではマリオン・コティアールは事故で足を失う。そのパートナーは格闘技で常に怪我をしている。『リード・マイ・リップス』でエマニュエル・ドゥヴォスの耳が聞こえない。その全てが「肉体」の一部を欠如したり、怪我をしたり、という設定だ。その痛みや欠如が物語を前に進めてゆく。そしてそのアナログな感覚こそが、多くの今の映画に欠如している瞬間だと思う。