84.『インディアン・ランナー』(再)  WOWOW

これまた久しぶりに通して観た映画。
昔から好きだったが、今回改めて観て、心動かされた。
ショーン・ペンの初監督作品にして、
魂の叫びの様なモノが感じられる。
往々にしてそうなのだが、やはり初監督作品というのが
一番「熱い」映画になる事が多い。だが、その思いが熱すぎたり、
経験の浅さからどうしてもバランスの
悪い作品になってしまうのが「処女作」というモノだ。
だがこの映画は完成度が高い。そこが才能という物か?
大方の巨匠がそうである様に処女作にこそ、
その監督の全てがつまっているのだ。

ショーン・ペンのオリジナル脚本。
「B ・スプリングスティーンの曲にインスパイアーされた」
とあるが、色々と調べてみるとかなり暗い内容のアルバムであるらしい。
初見の時(もう14年も前だ。
しかもその時観た自由が丘武蔵野館はもうない)
の時は気にならなかったが時代背景もヴェトナム戦争まっただ中で、
復員してきた弟と、街で警官をやっている兄の話だったのかと
改めて判った。


兄貴の方は警官として、まともに生きている。
妻と幼い子供がいて、街の人々の尊敬も得ている。
だがその「まとも」を維持する為に、彼は必死で生きている。
彼は時には警官として非情な行為を行わなくてはならない時もある。
だからこそ彼には子供が、妻が、家族が愛おしくてたまらないのだ。
それに反して弟は子供の頃からまったく変わっていない。
酒を飲みすぐに感情的になる。妻を愛してはいるのだが、
自分の感情さえコントロール出来ないのだから夫婦関係は悪くなる。
妻を殴り、妻の父親に刑務所に入れられたりする。
この2人が主人公の映画だが、これはまさしく
ショーン・ペンの二面性なのだ。
マドンナと結婚し、彼女を殴って離婚したショーン・ペン
その後ロビン・ライト・ペンと結婚し、娘を得ている。
だからこそ言える事がたくさんあったのだろう。
特に兄が弟に向って言う台詞は心に刺さった
「俺は自分の子供を見るのが好きだ。
女房も自分の家の庭を見るのも好きだ。
そしてお前の事も大好きなんだ」
あの台詞は正に魂の叫びだった。
本気で思っていないと言えない台詞だと思うのだ。