33.『ぼくを葬る』 シャンテ・シネ

IMAO2006-04-24

フランス映画界の第二の「フランソワ」、
フランソワ・オゾンの新作。
彼にとって「死」は重要なテーマだ。
この映画は彼の『まぼろし』や『スイミング・プール
等と並んで「死について」語った三部作となる。


重度のガンで死を宣告された新進気鋭のカメラマン。
彼の死は確実なもので、どこにも逃げ場はない。その時・・・
というのが大まかな導入だが、この主人公がアメリカ映画の様に
突然思い立って聖人君子になったり、黒澤映画の様に
仕事に打ち込んだりはしない。そこがあくまでもフランソワ・オゾンだ。
彼は冷静に一人の人間が「死」と対面した時、
どう行動するかを「観察」してゆくのだ。
だからあからさまに感動を誘う様な描写はないし、実際に
主人公の男が泣いたりするシーンは少ない。
でも見終わった後に僕は彼の顔、やせ細った身体を思い出す。
そして彼の考えた事、彼の感じた苦痛について再体験する事になる。
その静かな説得力に思わず納得してしまうのだ。


余談だが、主役のメルヴィル・プポーとヴァレリア・ブルーノ・テデスキは
僕が知る限り『おせっかいな天使』('93)以来の競演ではないですか?
僕、あの映画大好きなのですが、もはやビデオもDVDもない様で・・・・
ぜひどこかで再版してもらいたいのですが。