59.『嫌われ松子の一生』 吉祥寺プラザ

IMAO2006-06-17

技術的な事をいえば今の日本の映像業界で
これ程までの完成度を維持するのが
どれだけ大変な事か!?というのは理解出来る。
映像、音楽、衣装、美術、キャスティング・・・
そのどれをとって見ても羨ましい程の完成度だ。
コンセプチュアルで、しかもスキがない。
特にその微妙に意表をついたキャスティングには何度か笑わされたし、
そうした競演陣の中に素晴らしいモノを見せてくれた瞬間もある。
とはいえ、映画としては何か強烈な違和感を感じた
まま過ごした二時間だった。


多分、それはこの主人公の松子という女が判らない・・・
平たく言えば松子に一度も感情移入出来なかったからだろう。
そしてそれは映画としては一番の欠点だ、と僕は思う。
松子は、数々の幸福や不幸に出会いながら人生を歩んでゆく。
彼女は幸福な時には歌い、不幸な時には徹底的に辱められる。
幸福も不幸も身体的な運動に転化して表現しよう、
と試みられているのはよく判る。
だが不思議な事に、そこには少しの「痛み」も「喜び」も感じない。
表現をオーヴァーにし、画の完成度を高めれば高める程、
何か決定的なモノが見落とされている様な気がするのだ。
主演女優の体当たりの演技もただの空回りに見えてしまう
アタリにこの映画のフルスウィングな空振りを感じるが、
その空振りの責任は多分演出にあるのだろう。


全然余談だが、この映画を観た吉祥寺プラザは
僕が子供の頃からある、多分築40年以上経つ映画館だが
この映画を観るにはちょうど良い「ひなびた感」があります。
THXサウンドどころかドルビーも怪しい映画館なのだが、
たまーに行きたくなります^^
がんばれ、吉祥寺プラザ!