63.『春の日のクマは好きですか?』シアターN

IMAO2006-06-30

良い映画を観た後は、自転車のペダルが軽い。
キュートで可愛くて、愛おしい
ロマンティック・コメディー。


ペ・ドゥナ演じるヒョンチェは大型スーパーに勤める
ちょっと冴えない女の子。
彼女はある日、三流小説家の父親に頼まれて図書館
から画集を借りてくる様に頼まれる。彼女が件の画集を
借りてみると、本に書き込みがしてある。
「春の日のクマのように、君が愛おしくてたまらない」
書き込みには次に借りるべき本の指示も書いてあり
その美術書にも、またメッセージが。
メッセージに段々夢中になっていくヒョンチェだが、
幼なじみのドンハは彼女に夢中だ。不器用ながらも
2人の関係は徐々に・・・・
というのがおおまかな導入なのですが、どうなるか
は大体わかりますね。まあ、こういう話は大体は同じ様な話です。
どの恋愛も実は大体が同じ様な話である様に、
ロマンティックコメディーのパターンというのもそんなに
突飛であるわけにはゆきません。
でも、映画にも恋愛にも良いストーリーが必要だ。
どちらも、「現実」という素材からフィクションを作り出す、
という意味ではスゴく似通っている。
で、映画の「現実」って何か、という事ですが、
非常に難しい問題なのですが、その一つに「役者」というのがある。
役者の演技、特に仕草や表情といったモノは映画にとって
重要な「現実」であるのは間違いない。
そう考えると、この映画の主役を演じたペ・ドゥナという
「現実」がいなかったらこれ程までに魅力的な映画に
なっただったろうか?


この映画の彼女は最初は三枚目だが、
恋するにつれて本当に可愛くなってゆく。
その変貌ぶりを観ているだけでウキウキする程楽しいが、
三枚目を演じられる役者というのは、実力がある証拠だと思う。
彼女が音をクチャクチャたててモノを食べる様子、
缶コーヒーのプルトップを巧く開けられない様子、
そのどれもが、等身大の女の子のリアルさを表現していて
非常にナチュラルだ。こんなナチュラルさを表現出来る
ペ・ドゥナはやはり只ものではない。
彼女は『ほえる犬は噛まない』や『子猫をお願い』、
そして『リンダリンダリンダ』でも似た様な
三枚目を演じていて、ここのところすっかり定番化。
でも実際に見ると背も高くて、さすが元モデルさん、という感じ
のイイ女なだけに、この板についたキュートな三枚目は
大した演技力なのだなー、と思います。
次回作はポン・ジュノの新作らしい。これも楽しみ。


監督はこれが第一作となるヨン・イ。
CMやPVを撮っていた人らしいが、さりげない巧さを持っている。
画作りなども突飛ではないけれど確実な巧さがあるし、
何よりもこれだけ役者の力を引き出した演出力は素晴らしい。
あとあちらの映画を観ていていつも感心するのは
同じアジアなのに色使いが素晴らしい事だ。
この映画も例に漏れず趣味の良い色彩設計を感じた。
特に衣装とかは相当こだわっているだろう。
可愛らしいけれど、そこに無理がないのだ。
聞けば、ペ・ドゥナ自身の私服もかなり混じっているそうだ。
あとK-POPSの使い方も非常に上手。
ベタになりそうでならない程度のおさえ加減が難しい所だが
さすが元PV監督のセンス感じます。サントラ望む!


この映画はもっとたくさんの人に観てもらいたい。
こういう映画こそデート映画に超オススメなのだが、
あ、ダメか??だってこの映画を観た男子は確実に
隣に座っている女の子よりペ・ドゥナに夢中になってしまうから^^