44.『神童』 シネマライズ

IMAO2007-05-22

良い映画ですね。原作は未読なのでその魅力がどの程度表現されているのかは判らないのですが、手堅い職人的な演出を感じました。こういう「普通」の映画がたくさん増えて欲しい。
でも「普通」を実現するためには色々としなくてはならない事があるわけです。例えばこの映画の主要登場人物二人が「普通」にピアノが弾ける様にしなくてはなりません。その為には「普通」は最低でも2ヶ月くらいは練習させなくてはいけませんよね。それからこれはクラッシック音楽が主役の一人でもある訳ですから、スタッフもクラッシク環境が「普通」に判る様になる必要があります。そういう諸々の事を準備したり、リサーチするだけでもどんどん時間とお金がかかります。でもこういう映画がハリウッドで撮られたら、それは「普通」の映画です。例えばこの前観た『ラブソングができるまで』とかでもヒュー・グラントが「普通」にピアノが弾けて、歌が歌えますが、実はあれだってちゃんとレッスンを2ヶ月くらいしているんですね。でもハリウッドなら「普通」でも日本映画ではそれが「普通」に出来ないのが「普通」でした。ちょっと前までは・・・・
だからこの映画はとりたてて騒がれる映画ではないのだけれども、キチンとした映画だと思う。成海璃子はあの生意気な感じ含めて当たり役だと思うし、松山ケンイチだって『デスノート』の変に力の入った演技よりずっと良い。シーンの組み立てだって「狙い」がちゃんと判る。それが全て巧くいっている訳ではないけれど、そこには確実な「演出」がある。で、そういう環境を全て整えるのがプロデュースというもので、そういう意味ではこの映画のプロデューサーは褒められても良いでしょう。
原作にあるかどうかは判らないのですが、「ピアノの墓場」は村上春樹の『1973年のピンボール』を彷彿とさせました。久しぶりにちょっとピアノ弾いてみたくなったけれど、もう指が動かなくてねー。大体もう楽譜読めんしね、って本当に俺ピアノ弾けてたのか?