(再)『野性の少年』 DVD

IMAO2010-05-04

この前ちょっと調べたい事があって出だしだけ観たら、どうしても観直したくなり朝の4時からの鑑賞。いやー・・正直参った。こんな地味な話だし、久しぶりだし、DVDだし・・寝る事覚悟で観始めたのだが、ワンシーンワンシーン丁寧に作られている事といったら・・
この映画のカメラマン、ネストール・アルメンドロスが事ある毎に言っているが、トリュフォーのカメラは常に動いている。通常カメラが動くと、その動きが主張しすぎる事があるのだが、この映画のカメラは、対象に付かず離れず適度な距離感を持ってシーンを構築してゆき、その動きは物語に干渉しない。フレームは常に変化し続けるから、常に美しい構図を作ってゆくのが難しいのだが、そこはアルメンドロスのセンスが絶妙なフレームワークを生み出している。
技術的な事も素晴らしいのだが、久しぶりに観て感じたのは、この映画のテーマ性の深さだ。「人間には愛情と教育が必要だ」というテーマ。公開当時この映画をスウェーデンで上映した時の話。会場の人々がなぜ野性の少年を森の中に放っておかなかったのか?とトリュフォーに質問をした。その時トリュフォーは泣き出し、会場を立ち去ったという。トリュフォーにはその質問が信じられなかったのだ。少年時代、小学校もろくに通わず、映画と本から独学で学んできたトリュフォーにとって教育と愛情は彼の一生をかけた関心事であり、トラウマだったのだろう。