42.『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 新宿ピカデリー

IMAO2010-06-12

大森立嗣の作品はよく考えてみれば『ゲルマニウムの夜』を観た事があった。今回の映画は典型的なロードムービーで、青春の行き場のない気持ちを旅に昇華させたストーリーだ。こういう話は大抵は決まっている。
だから、この映画を詰まらないか?と言うとそんな事はなくて、肉体で感情を表現しようとする意気込みは随所に感じられる。毎日壁を壊し続ける機械の振動でジュンの手は白くなっている。ケンタの兄は毎月の様に金をせびる職場の先輩を、ナイフで斬りつける。ナンパしたカヨちゃんはきつい腋臭持ちだ。旅の途中で出会った友達の片目は母親によってえぐられている・・そうした1つ1つのシーンは丁寧に作られているし、ディティールも面白い。そしてそのディティールの積み重ねで彼等の感情をうまく表現出来ている部分もある。それだけに、やはり不満が残る。彼等に行き場がないのは判る。そこに答えがないのも判る。これはアンチストーリーな映画で、観客に答を委ねようとしたのも判る。そうした事は百も承知で言っているのだが、先が見えない世の中だけに、何か新鮮味のあるエンディングが欲しかったのだ。それが例えハッピーエンドでないにしても・・
キャスティングは全員面白かった、高良健吾は今『ボックス』も同時公開しているし、これからますます出てくるだろう。