74.『ノロイ』 75.『アバウト・ラブ/関於愛』

僕こういうの好きではないです。
まあ簡単に言うと『ブレアウィッチ・プロジェクト』の日本版。
『ブレアウィッチ〜』はアイディアは認めましょう。
でも僕自身カメラを回す事もあるから判るのだが、
こういうエセドキュメンタリーほど嘘が見えてしまう物はない。
大体本当に重要な事が起こっている時こそ
回っていないのがカメラという物なのだ。
僕はドキュメンタリーも好きだし、
「まるでドキュメンタリーを見ている様な映画」
というのも嫌いではない。例えばケン・ローチみたいな映画とか。
でもこういう似非ドキュメンタリーチックな作品ほど悪意を
感じるものはない。
大体事務所に所属しているタレントがフリーランスの記者の家
に泊まったり自殺死体が映ったビデオが発売されたり、
と嘘の部分が多すぎる。そんなの今は素人だって判る筈なのに。
そういった細部の甘さが目立つ映画の登場人物達に
感情移入は出来ない。

僕にとって映画の「リアル」さとはそういうものではない。
フィクションという限定された条件の中での出来事である
にも関わらず、もう二度と起こりえない様な瞬間を捕らえた
その時こそ、映画のリアルとは表出するものだ、と思うのだ。
まあこれは僕の個人的な感想にすぎないが。

まあ興味深いワンシーン・ワンショットが数カ所あった
事だけは認めよう。だがそれ以上でもそれ以下でもない映画
だと思う。特にラストの方だけちょっと面白かった。

http://www.aboutlove-movie.com/

この前に観た『ノロイ』が今ひとつ釈然としない物があって
前売り券を持っていたこの映画を観る。
東京、台北、上海のアジア三大都市での留学生と
その土地の人々のラブストーリーだ。
藍色夏恋』のイー・ツーイェンが監督していたり、
同じく『藍色夏恋』の主役チェン・ボーリンが東京篇に
出演していたり、と小ネタが気になっていたので前売り券
を買っていた。


で、僕はこの映画好きです。
どれにも共通しているのはキャストが良かった事。
東京篇はチェン・ボーリン伊藤美咲
台北篇は加瀬亮とメイビス・ファン、
そして上海篇は塚本高史とリー・シャオルーだ。
小道具として共通しているのが「二輪」。
東京篇と上海篇は自転車。台北篇はバイク。
僕はどちらも大好きなので、どうしても気になってしまう。
思えば『藍色夏恋』でも自転車の使い方が巧くて、
その頃から結構自転車に乗り始めたのだなあ。
(ちなみに『藍色夏恋』では台湾の自転車メーカーで
世界一の生産量を誇るGIANTが協賛している。
台湾は世界一の自転車大国なのだ。)
だからチェン・ボーリンとかものすごく自転車が板についているし、
加瀬亮のkawasakiもなかなか良かった。
テーマとして共通しているのはコミュニケーション。
言葉が通じない相手にどう気持ちが伝わるのか?伝えてゆくのか?
そのギャップが巧くキーとして使われている。


三本ともなかなか良く出来ているのだが、やはりトリの「上海篇」は
良い出来だった。塚本高史はちょっと役不足な感じがしたが、
何よりもリー・シャオルーの魅力と脚本の巧さに唸った。
これはリーの映画だね。プロフィールを見るともう24才だが、
(という事は撮影時は23才?)
見事に10代の少女の役を演じている。
相当の役者と見た。やはり女は怖いねー。
そういえば『シュウシュウの季節』という
切ない名作に出ていたのが彼女だとパンフを見て気付いた。
中国ではかなり有名な女優らしい。
この主人公の少女の気持ちに同化している自分がいて
気持ちよくハメられました。
しかし、日本映画界ではオムニバス映画は当たらない、というジンクスが
あるらしく、多分この映画も知らない内に終わってしまうのだろうなー。
もったいない事であります。