48.『かもめ食堂』 吉祥寺東亜興行チェーン

IMAO2006-05-17

大抵の日常生活というのは、退屈で変化が少ない。
普通の人というのは大体はそう暮らしているし、
そう暮らせる事というのは実は幸福な事だったりする。
でもまあ時には泥棒に入られたり、
友だちが急性アルコール中毒でぶっ倒れたり、といった
些細なトラブルをその都度その都度対処していって、
そんな中にも美味しいコーヒーや、美味しいおにぎりを
友人達と食べれたりする、という「小さいけれど確実な幸福」
村上春樹流に言えば「小確幸(しょうかくこう)」を噛み締めて
ゆくのが、日常生活の美味しい頂き方なのだろう。
で、これはそういう事をフィンランドでやったら、どうなりました?
という映画です。


群ようこ、がオリジナル小説を書き、
それを荻上直子が脚色、監督したという作品。
インタビュー等を読むとどうもプロデューサーとの
酒の席から始まり、映画化までこぎ着けたらしい。
こういうのって大体は「酒の席」だけで終ってしまう事が多いので、
完成、上映まで行ったのは良い事ではないでしょうか?


荻上直子の作品を観るのはこれが初めてだし、誤解を恐れず
に言うのならば、これはやはり、「アンチ・ドラマ」
とでもいうべき映画でしょう。
ある女がいて、フィンランドに店を開くが、客は来ない。
でも最後には満席になるほどになりました。というお話が淡々と描かれる。
もちろん、そこにサムシングが起こりつつ進行してゆくのだが、
その「サムシング」はあまりにも「日常的」なので、「普通の映画」
を期待した人は肩すかしを食う事になる。なにしろそこには
爆発もなければ、大恋愛もないのだ。


だからこの映画を「つまらない」と言う人がいても全然おかしくは
ないのだし、実際荻上直子も原作を脚本化する時あまりにも
ドラマがないので、最初戸惑ったらしいのだが、それでも
二時間、フツーに観れてしまい、しかも拡大ロードショーしている
というのは、やはりこの映画がちょっと美味しい、という事なのだろう。


フィンランドの風景や小物や衣装等が、可愛く愛おしく撮られている。
撮影スタッフがほぼ現地の人、というのもこの映画の魅力の一つだろう。
多分、この映画を観る女性客達は男の僕なんかよりもずっと
こまかーい部分を観ているし、「感じている」のだ。
今日の映画館は女性デーという事もあって、ほぼ9割が女の人。
僕みたいなオヤジ一人で観に来ているのなんて確実に
「変なオジさん」状態だ。平日昼間っから映画とか観ていると時々
本当に後ろめたくなります^^
でも彼女達はこの映画を観た後、すっかりその気になって、
「今度の夏はフィンランドへ皆で行かない?」とか言いつつ会食で
もするのだろう。まあ、そういう気分にちょっとなるし、
そういう映画があっても良いと思う。そしてそういう事を実行に
移すのは今は大体が女達だ。
ぐたぐだと書いてきたけれど何が言いたいかと言うと
僕はこの映画を意外と気に入っているのかもしれない、
という事であります。