92.『深海 Blue Cha-Cha』 新宿武蔵野館

IMAO2006-08-23

この映画のパンフレットにはケン・ローチ
コメントを寄せている。僕の駄文なんかよりも
この映画の事を巧く語ってくれるでしょう。


「この映画をラブストーリーとしてまとめてしまうのは、
余りにも決まりきったやり方だ。
この作品は人間関係を描いた映画である。
人々が何を感じ、付き合い、成長するのか。
そして、社会や経済的なプレッシャーがどう影響するのか・・・
行動の暗号が彼らを近づけたり、
又は別れに結びつけたりする。」


僕が映画の好き嫌いを判断する基準に
その映画の登場人物達の「心」が判るかどうか?
というのがある。そこでは方法論もジャンルも関係はない。
要するに彼等の肉体的、精神的な「痛み」や「悦び」
がリアルにコチラに伝わってくるかどうか?という事だけど、
この映画を観ていて本当に「痛く」「切なく」「辛い」気持ちを味わった。
でもそんな映画を撮るには、やはり並大抵の才能では不可能だし、
「現場の運」を引き寄せる力も必要だ。
この映画を撮ったチェン・ウェンタンには間違いなくその力がある。
彼はパンフの中でこう語っている。


「虚構の芝居と現実の感情が偶然交わり、その衝撃は芝居や現実
の人生よりも一層充実した張力を生み出す」


この映画の全てのカットにそうした「張力」に満ちている。
そして実写で映画を撮る事の本当の悦びは今そこにしかない、とも思う。
残念ながら新宿武蔵野館は空いていた。
僕だって予告編を観逃していたら知りもしなかった作品だ。
せめてこのページを見ている人がいたらダマされたと思って
観に行って下さい。ソンはしないと思いますよ^^
少なくともケン・ローチダルデンヌ兄弟、そしてカサヴェテス
の作品等が好きな人にはオススメだと思います。
彼等の志は皆同じ方向を向いていると思う。
それは僕が言うのもおこがましいが
「生きている人間をフィルムに定着させる事」
なのではないかと思う。
そしてそれは誰にでも出来る事ではない。