96.『グエムル 漢江の怪物』 T-JOY大泉

IMAO2006-09-02

この映画も転ぶシーンが炸裂しますね。
何しろこの怪物そのものがよくコケる^^
それから例によって跳び蹴りもありました。
ポン・ジュノのおなじみの役者達が総出演です。
そして、面白い・・・・スゲー奴・・・・


ポン・ジュノの映画はいつも少しだけ位相がズレている。
悲劇を描いている様でいて、喜劇的だったり、
盛り上げるだけ盛り上げておいて、オチを外したり、
誰もが望んでいるラストからちょっとだけズラしたり、と
素直に笑ったり、感動出来ない様な仕組みに満ちている。
そのズレの向こう側にほんの少し「現実」という言葉が見え隠れ
していて、こちらはやっとほくそ笑む事が出来るのだ。
そしてその「ズレ」や「外し」があまりにも見事で、
この味に一度ハマるとまた味わいたくなってしまう様な
非常にクセのある定食なのだが、このクセは決して誰もが
食えない味ではない。少なくともM・ナイト・シャマラン
よりはずっと食いやすい。だからこそ、ポン・ジュノの映画が
シネコンレベルの映画にまで育ったのだ。


監督の才能と周りの評価が一致する事は少ない。
良い映画なのに当たらない、とか過大評価されているだけ、
みたいな事が多いのが映画(世の中)なのかもしれないけれど、
本当に才能があって、しかも観客に乞われる監督って、
スピルバーグ位だろう。考えてみればスピルバーグだって
デビュー当時は相当クセのある監督と見られていた筈だ。
そしてこのポン・ジュノはそういう監督になる人だと思う。
少なくとも彼にはそういう器がある。
まあ、要するに「メジャー感」があるって事ですけど。


だが彼は安易にハリウッドデビューなどはしない気骨に
満ちた監督なのだろう。この映画だってテーマ的にも
ハリウッドでリメイクは不可能だろうし、して欲しくない。
彼はハリウッドを取り込み、利用しながらも、韓国オリジナル
を目指し、そういう映画を撮り続けている。
彼はアメリカを「THE HOST」とする寄生虫なのだ。
でもそれで良いと思う。
ポン・ジュノよ、作れ、作れ、もっとたくさん映画を作れ!