126.『麦の穂をゆらす風』 シネ・アミューズ

IMAO2006-11-30

なんかあまりの見事さに参ったなー。
ケン・ローチの作品ってどれもスゴいけれど、
『大地と自由』とかはちょっと苦手だったんですね。
いや、もちろん良い映画なんだけど、イデオロギー
ちょっと先走りしてる気がしたのかもしれない。
コレもまあ、そういう作品であるのは確かだし、やってる事は
この人ずーと同じなんだけど、今回はものすごく巧くいってる。
多分、ここ数年ずーっとケン・ローチと共同作業をしている
ポール・ラヴァティの力も大きいんだろう。
話の展開とか構成とか、この人は本当に上手。
「憎しみが憎しみを産み、その環の中に入ってしまった者は
その業から逃れる事が出来ない・・・」
そんな事をすごく判りやすく無理なく構成している。
でも脚本だけが目立つ様な事がない。
脚本だけでなくて全てがそう。撮影も美術も音楽も
その全てが映画全体に地味だけど確実に奉仕している。


それでいてちゃんとケン・ローチ印の映画になっている。
最初映画が始まった時、主人公達がハーリングっていう
ホッケーみたいなスポーツをやっている。
その画がもう「ああー、ケン・ローチの映画だなー」って自然に感じる。
その画は『ケス』の中でのサッカーシーンにも通じるし、
SWEET SIXTEEN』で主人公の少年が子供と遊んでいる姿とも同じだった。
そういった日常を生きる人々がスクリーンというガラスを通して、
まるでそこで「生きている」様な感覚・・・・
これはもう世界的な才能でしか成し遂げられないモノだと思う。
生活があって世界がある。そういう事がさりげなく示されている。
多分今コレが出来るのはケン・ローチダルデンヌ兄弟
くらいかもしれない。こういうの観せられちゃうとちょっと脱力
しちゃう。もう絶対に行けない所にいる人だなー、って。


で、余談が一つ。
この映画観ている時映写の切り替えをミスられました!
せっかく映画館で映画を観に来ているのだからコレは止めてよ。
と、いうより映画館の上映って早くDLPとかになってもらいたい。
僕としてはデジタルの導入は撮影よりも映写にこそ早く普及
してもらいたいと常々思っている。
つまり「フィルム撮影」して「デジタル上映」という流れね。
でも世の中は「デジタル撮影」して「フィルム上映」という流れ
が増えつつある。特に日本では。
でもパンチサインとか無くなっちゃうと
それはそれで寂しかったりして^^