(再)『Etre et avoir ぼくの好きな先生』DVD

IMAO2007-01-24

なんだかそこそこ忙しいのですが、ある仕事を前にコレだけは観ておこうと。確か地味な映画だったから絶対に寝るかも?と思って観直したのですが、すごく豊かな映画でした。気がつけば子供達の表情を観て大笑いしている自分がいたりします。フランスの田舎にある3才から11才までの生徒が通っている1クラスしかない小さな学校、その姿を捉えた小さなドキュメンタリー。
監督のニコラ・フィリベールはこの学校の生徒も先生も同じ様に「観察」する。画を描くのに集中出来ない子供、文字を書くのに苦労している子供、子供たちと一緒にクレープを作る先生、喧嘩している子供達・・・そういった誰もが経験してきた様な出来事がカメラに捉えられているのに、なぜこれ程までに瑞々しく、同時に豊かなのか?
あんな映像はその場にいけば誰でも撮れるのではないか?と思う人もいるだろう。でもそれは違う。ニコラ・フィリベールはこの学校にめぐり逢うまで100校以上の学校を半年かけて周ったそうだ。そしてこの希有な学校と先生を見つけたのだ。この映画を撮る環境作りこそが、この映画の全てだと彼には判っていたのだろう。そうやって捉えられた人々の生きている姿だからこそワンカットワンカットの濃度が違ってくる。この映画には一言もナレーションやテロップが使われていないが、それは逆に言うと画と音の「純度」が濃いという事だ。要するに素材が良くなければ、どんな料理人でも旨い料理は作れないって事ですね。
それと同時にこの映画はやはり「顔」の映画なのかな、とも感じた。人々が生きている姿が捉えられる事も大事なのだけれど、それを巧く積み重ねるテクニックがあってこそ「顔」に意味が出てくる。ラスト、前期の授業が終わり、「良い夏休みを!」と言って生徒たちを送り出した後の先生の顔!あの顔は全ての生徒達の顔があってこそだ。
非常にベタな事を言えば、やはり教育者って本当に責任のある大変な仕事なんだなー、と思いました。医者が人間の身体や心を治す仕事だとするなら、教育者というのは人間の心を成形する手伝いをする非常に重要な仕事なのだろう。良い先生に出会えたかどうかでその後の人生が大きく変わってしまう可能性だってあるのだから。そう考えると俺の人生で良い先生にめぐり逢った事ってあったかしらん??

□追記:題名は『Etre et avoir ぼくの好きな先生』が今のDVDのタイトルらしいです。「存在と所有」・・・うーむ、深いタイトルだなー。