53.『不完全なふたり』 新宿武蔵野館

IMAO2007-07-03

「ふたりでいること」は、諏訪敦彦のデビュー作『2/デュオ』からの一貫したテーマだ。状況は違えども、そこにはふたりが情熱のままに愛し合った後の、「それでもふたりでいること」が描かれきた。それは多分世界的に普遍的なテーマで、だからこそこの映画がフランス語がほとんど話せない監督によるフランス映画だとしても、確実に伝わる映画となった由縁なのだと思う。とは言ってもそこに確実な演出に対する自信とプライドがないと、こういう映画は撮れない。即興を取り入れた演出は何よりも人間関係が大切で、その人自身の人間性が問われるからだ。要するに人間が開いていないとこういう映画は撮れない。
僕はこういう「ふたりでいること」から随分と遠のいてしまったので、映画が始まってから馴染めなかったのだが、映画を観終わって数時間経ってから、色々と思い出してしまった。それはこの映画がある意味でもの凄くリアルな瞬間を孕んでいたからだろう。あの時言った事、言われた事、そうした日常の細かい動作や言動は意外と記憶の底に棲み着いているものだ。
撮影は前作『H Story』の時と同じキャロリーヌ・シャンプティエ。世界で一番有名な女性DPだが、この作品に一つ気に入らない点があるとすれば、撮影がフルデジタルである事だ。かなり良くはなっているが、やはりまだこういう映画には向かないと思う。後処理の問題もあると思うが、どうしても色調に深みが出ない。好みの問題もあると思うが、最近個人的にデジタル一眼レフを使い始めた事もあって、デジタルの欠点ばかりが目につく。でもこの映画がたった11日間で撮られた事を思うとデジタルの貢献度は大きいかもしれないが・・・
とは言え、最近少なくなってきている「大人の映画」です。それを証拠に平日の昼間だというのに中高年を中心としたそこそこの入りでした。で、その中で一番後ろの席に座っていたガタイの大きいオジさまは、あの『硫黄島からの手紙』で主役だった謙さんでしたか??