56.『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』 シネマライズ

IMAO2007-07-10

北野武松本人志の影に隠れてしまって、この作品がカンヌの「批評家週間」に招待されていた事を知る人は少ない。ま、その値があるかどうかはともかく、フツーに面白く出来た映画だと思います。CM監督としてベテランのダイハチさんこと、吉田大八の劇場映画デビュー作。
芥川賞候補作家でもある本谷有希子の舞台が原作。自意識過剰な田舎出身の女優とその家族の話だが、フツーのキャラは一人も出てこない。そのアタリが非常に舞台的だし、作り込まれた日本の田舎感とかが外国人とかにはちょっとエキセントリックに見えたのかもしれない。だがその一方で映画全体が小さくまとまってしまった感があるのも事実。まあ手堅く纏めようとしてしまうのは判るけど、もうちょっと狂っている映画の方が好み。
キャスティングが成功していると思う。芝居は下手なのに女優を目指している主人公の役に佐藤江梨子。このハマり具合は『カジノ』の時のシャロン・ストーンを彷彿とさせました。シャロンだって決してすごく巧い役者じゃないけど、生き残れたのはあの映画のお陰。サトエリにとってもこの映画がそういう映画になれば良いと思う。なにはともあれ、関係諸氏の皆様お疲れさまです。大八さん、また映画館で会いましょう。