57.『石の微笑』 Q-AXシネマ

IMAO2007-07-12

うーん、立派なバカ映画(ホメ言葉)!ヌーヴェル・ヴァーグ五人組の一人、クロード・シャブロルの作品。今年で77才、80才にも手が届かんというシャブロルの「余生ムービー」ですが、遊びまくってます。
ザコンの青年がいて、妹が結婚する事になる。その結婚式で出会った花婿の従姉の娘。その娘がとんでもないエロパワーを持っていて、その魅力にホダされてにダメダメになってゆく男の運命が描かれます。まあハッキリ言ってストーリーなんかどうでも良くって、こういう映画はその過程と細部の演出を楽しむべきでしょう。でも芝居の付け方、カメラの割り、それらに全てアルチザンの力量を感じます。それは出だし数分観ているだけでよく判る。人間関係が仕草とか、表情だけですぐに理解出来る。こういうのは下手な演出だと出来ません。要するにものすごく巧いんだけど、表現している事自体は非常に「バカ」です。そのバカはフレームの端っことか奥の方で行われていて、一粒で二度美味しい、みたいな映画になっています。かつてはこういう映画を撮れるのはポランスキーとかデ・パルマとかでしたが、最近は二人ともやや失速ぎみです。シャブロルは残りの余生、こういう映画に全力をつくしてもらいたいと思います。
ブノワ・マジメル、ずいぶんと良い役者になりましたね。僕が覚えている限りでは『シングル・ガール('95)』の時はただのプータローの兄ちゃんでしたが、今ではすっかり立派な役者になってます。一方の「魔性の女」のローラ・スメット。この人はナタリー・バイの娘だそうで、ナタリー・バイといえばトリュフォーの女優さん!?もう世代も一巡りしているんですね。スタッフもシャブロルの親戚ばっかりみたいだし。本当に羨ましいほど幸せな老後だな−・・・