59.『クィーン』 吉祥寺プラザ

IMAO2007-07-15

観逃した!と思っていたら、評判が良かったせいか地元で一週間だけ公開してくれた。職人スティーヴン・フリアーズの力量がいかんなく発揮された佳作だと思う。
97年トニー・ブレアが首相に就任直後に、ダイアナ妃が事故死した。その時にエリザベス女王がどう行動したのか?というのが話の大筋。この手の話題は日本では絶対に映画化されないが、あくまでも女王を「やんごとなき人」でなく「血も涙もかよった人間」として表現している。この女王は自分で車も運転するし、メガネだってカーディガンの裾で拭いたりする。そういう演出は徹底していて、トニー・ブレアも自宅にいる時はサッカー・ジャージだし、その奥さんの育ちだってその仕草一つでよーく判る。そういう細部の積み重ねが正に「人間を表現すること」なのだ。この映画が史実に基づいた話かどうかは知らない。でも映画で重要なのは、その世界の中で「どんな人間が生きているのか?」という事を表現する事だと思う。そういう意味で、この映画は「人間エリザベス女王」を描く事に成功している。
日本では皇室の話題は事実上タブー視されていて、映画どころか冗談の種にも出来ないのだが、イギリスではよくこの手のものが作られる。大体、「硫黄島」も「昭和天皇」も映画化したのは外の人達だった。日本に本当の意味での「言論の自由」なんてものは存在しないのだ。