30.『接吻』 ユーロスペース

IMAO2008-03-13

少し的外れかもしれないが、この映画を観て思い出したのは『タクシードライバー』だ。この映画はサスペンスでもあり、恋愛映画でもあり、そして何よりも人間の孤独についての映画だ。だから孤独についての映画『タクシードライバー』に通じるものがあるのも、あながち間違ってはいないだろう。
何の動機もなく殺人を犯した様に思える容疑者がいる。男は自分が犯人だという事以外は何の自供もせず、黙秘を続けている。だが、その容疑者をテレビで観たある女が、この容疑者に想いを寄せる様になる。そして女はこの獄中の容疑者と結婚するのだが・・・というのが大まかなストーリー。
女が容疑者の弁護士に忘れられない台詞を言う。「私たちはいつも人から利用されてばかりいるんです。それで言いなりにならないと皆怒るんです。」彼女はそうした自分の人生の理不尽さに関して、ひっそりと、でも確実な怒りを抱き続けている。だからこそ彼女は誰かに分かってもらいたい、という気持ちと同時に、この容疑者に対して異常な感情移入を抱いてゆくのだ。その過程は観ていてゾクゾクするほど面白い。でもラストの付け方には納得出来ない人もいるかもしれない。それも含めて面白い映画ではあるのだが。
出演陣が皆見事だった。小池栄子豊川悦司仲村トオル篠田三郎、その誰もがこの人以外あり得ない!というハマりぶり。特に小池栄子はやはり新境地だろう。どうでも良いですが、篠田三郎って大映ニューフェイスだったんですね。今更ながら初めて知りました。