32.『ノーカントリー』 シネマメディアージュお台場

IMAO2008-03-15

僕は映画というモノを感覚的なモノだと捉えているのだけれど、世の中には映画を「科学」だと考えている人もいる。例えばキューブリックがまさしくそういう人だ。そしてこのコーエン兄弟もまた映画を科学的に捉えている監督だと思う。彼等の手にかかると映画には公式があって、その組み合わせ次第で映画が完成するのだ、と思えてくる。いや、確かに映画には確かにそういう面もある。それはこの映画のカット割りをみるとよく分かる。非常にロジックな無駄のないカット割りなのだ。
こういう監督の作る映画に出てくる登場人物は、ロボットの様に見えてきたりもする時がある。でも、この映画ではそういう科学的なスタイル&人間描写がキマりまくっています。特にハビエル・パルデム演ずる男は正に殺人マシーン。彼は人間というよりはターミネーターの様でもあるし、自分で怪我を直す仕草も「治療」というよりは「修理」を連想させられる。血は流れているのに血が通っていない感じとでも言えば良いのか?とにかくこの男の仕草がとてもつもなく怖い。きっとそのうちフィギア化されるに違いない。
そうした完璧に構築された世界観の中で、唯一人間臭いのが、トミー・リー・ジョーンズ演ずる警察官だ。そのアンバランスさがこの映画の魅力なのだが、それは極度に様式化された世界の中で、彼は異様な匂いを発している。でもとにかく不思議で怖い映画。もう一度あの怖さを再確認してみたくなったりもして・・・