42.『黒い潮』 WOWOW

IMAO2008-04-22

東京物語』などの出演で日本映画史に残る名優、山村聰の監督作品。彼はこの映画を含めて6本程の映画を監督している筈だが、監督作品を観るのは初めて。ナレーション等の表現が外している部分もあるが、全体的に見ると良く出来た映画だと思う。的確な演出力を感じた。
現在では他殺説が有力な下山事件だが、客観的視点の記事作りにこだわった、ある新聞社をモデルに描いた井上靖の小説が原作。菊島隆三脚本、 木村威夫美術、助監督の鈴木清太郎は若き日の鈴木清順という豪華スタッフ。キャストも津島恵子左幸子、東野英二郎、安倍徹、芦田信介等、かなり渋い役者が勢揃いしている。制作年度は1954年で、山村聰も役者として成瀬巳喜男の『山の音』などに出ていた時期だ。
自分の信じた道が全て裏目に出てしまう主人公の生き様が、切なく身に沁みた。どんな仕事でも悔しい思いをする事は一度や二度ではないのだろうな。なんかそういう意味でも少し励まされた様な気がした。