54.『ぐるりのこと』 シネマライズ

IMAO2008-06-18

しみじみ良い映画。もちろんコレはただの映画であって、キレイごとだよ、と笑い飛ばしたくなるシーンもたくさんある。でもそういうシーンでさえ「映画」な所が愛おしい。
リリー・フランキー木村多江、この2人を主役にした時点で、橋口監督には相当な覚悟と確信があったに違いない。でもあの2人の何気ない仕草や、だらしない体格や、あまりにも普通な感じが、この作品の命でもある。そしてキャスティングが映画の演出の第一歩だとしたら、この映画のキャスティングはほとんど完璧だ。倍賞美津子柄本明寺島進安藤玉恵寺田農・・脇の脇まで妥協のないキャスティングは日本映画ではかなり希有な出来事。
橋口作品としては、『ハッシュ』以来6年ぶりの新作。その間、監督にも色々あったらしい。でもその「いろいろ」が作品にうまく昇華されている。だからこれは撮るべくして撮られた作品なのだとも言える。そしてそういう映画こそが僕が本当に観たい映画なのだ、と改めて思った。多分この映画はもう一回どこかで観る事になると思う。