94.『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』

IMAO2008-12-18

コレ、建前としてはドキュメンタリーという事になっていますが、もちろんスコセッシの映画でそんな筈がありません。この映画よりは『ワン・プラス・ワン』のストーンズの方がよっぽどドキュメンタリーです。
しかし、こんな贅沢なライブ撮影もありません。なにしろ、一日のライブを「再現」するのに二日かかったとか、カメラマンが皆超一流で、10台くらいのカメラが今時全部フィルムカメラだとか、クリントン夫妻も出ているとか、何かと話題がつきませんが、なんといっても、一番の魅力は「カメラの近さ」と「音の良さ」?!まるでミック・ジャガーの汗まで飛んできそうな距離に入るクレーンカメラと、後から吹き替えしたんじゃないかと疑うほどの良質なサウンド・・そういう意味でこれはもう立派なフィクションなのだけれども、それと同時にミック・ジャガーの動物の様な動きはリアルなドキュメンタルな魅力を漂わせております。そういうフィクションとドキュメンタリーの狭間にいること、それはつまり、フィクションを撮ればなぜか妙に生々しい瞬間を刻み込んでしまい、ドキュメンタリーを撮れば、そこに作為がバレバレな印象が否めない作品を撮ってしまう作家性・・それこそがスコセッシの最大の武器でもあり、弱みでもあるのだなー、と今更ながら感じ入ったのであります。
細かい所ですが、個人的に一番感心したのは編集のリズム。普通音楽ものを編集する時は「カット・オン・ビート」といってリズムに合わせるのが常套手段です。この方法はまあ普通にかっこ良く見えますが、これ見よがしな感じがするんですな。でも、この映画では微妙にリズムからずらして編集してます。専門的に言うと「繋ぎが見えない」非常にナチュラルな編集です。これは意外とムツカしいのよー。
で、最後にTOHOシネマズ六本木ヒルズで観た観客の皆様へ・・・(気持ちは判るのですが)映画の途中でビールを買いに行くのは止めて下さい!これはライブではなくてレッキとした映画なんですよ(笑)ま、各々の常識でやってもらうしかないのだが、大人の品格を持ってほしいです。いくら不良中年(老人?)の映画とは言ってもさ。