34.『パーマネント野ばら』 新宿ピカデリー

IMAO2010-05-25

この映画の中盤で、菅野美穂演ずる主人公が恋人役の江口洋介とのデートの後、トンネルで別れるシーンがある。彼女はしばらくして振り返り、江口の後ろ姿を確認する。その時彼女はきっと様々な事を考える・・この人と次に会うのはいつだろうか?また元気で会えるのだろうか?いつまで仲良くいられるのだろうか?恋愛中のそうした切ない想いがよく現れている良いシーンだった。
吉田大八の三作目となる映画。この人の映画は全て観て来たが、この映画が一番良く出来ていると思う。主演の菅野美穂はもちろん、幼なじみの小池栄子池脇千鶴も良い芝居だ。恋愛は自分が渦中にいる時は一種の病気だが、端から見ればギャグにしか見えない時もある。そうした切ない可笑しさを巧く表現出来ていたと思う。
原作は未読なので、何とも言えない部分もあるが、ラストの付け方は多分好みが別れる処だろう。もしこの映画のテーマが「恋は幻」とでもいうべきものならば、合っているとは思うが、ちょっと脚本のテクニックが鼻につく感じもする。1つ1つのシーンや芝居が良く出来ているだけに、もっとストレートに勝負しても良かったのではないか?とも思えてしまった。もちろん、それでも愛すべき映画である事に間違いはないけれど。大八さん、これからも良い映画を撮って下さい。