68.『瞳の奥の秘密』 TOHOシネマズ・シャンテ

IMAO2010-09-08

この映画について何か書かねばなー、と思っていたのだけれど、映画の感想を書くのはいつも観終わって数日経ってからだ。筆無精だから、というのももちろんあるけれど、映画ってやっぱり「記憶の集積」だ、とどこかで思っているからかもしれない。事実は過去にならないと記憶にならない・・当たり前の様だけれど、僕にとってはそこはかなり重要で、経験した事に意味が伴ってくる為には、時間の助けが必要だ。
前置きが長くなったけれど、この映画の登場人物たちはある記憶に囚われて続けている。25年前に起こった事件・・妻を殺された男、その事件を担当した検事補の男、そして苦労の末に突き止められた犯人。だがアルゼンチンという国の事情が彼等を翻弄してゆく・・その事件について主人公の検事補は小説に書こうとする。「過去じゃない、今も続いている」そう語る彼にとって過去は単なる過去ではない。時間という集積が、過去を忘れられない記憶として定着させたのだ。まるで露光されたフィルムの様に。
監督のファン・ホセ・カンパネラはアルゼンチンではかなり有名な監督らしい。プロフィールを見るとアメリカでも人気ドラマなどを監督していた、とある。それだけに余裕のある確実な演出を感じた。準備に9ヶ月をかけたサッカー場のシーンなど、今時のデジタル技術と、アナログ的な感覚が融合した見事なワンシーンだった。こうした「融合」はこの映画そのものの魅力でもある。単なるミステリーでもなく、サスペンスでもなく、ラブストーリーでもない・・この映画そのモノにさせている何かこそが、こうした「融合」の結果だからだ。