6.『人間蒸発』 かもめ座

IMAO2013-02-11

レンタルスペース・ニューロカフェが行なっている「真眼塾」というワークショップから派生した上映会。この映画の撮影を担当した石黒健治氏と録音兼製作進行を担当した武重邦夫氏とのトークショーがあり、非常に興味深く観た。DVD上映だったのが、ちょっと残念。確かに今のプロジェクターはかなり精度が高いが、出来ればこういう映画は16ミリでも良いからフィルムで観たい!
1967年製作だから、日本でもヌーベル・ヴァーグの影響下にあって、フィクションの新しい形態が模索されていた時代だ。今村昌平もこの当時フィクションに疑問を感じていて、テレビのドキュメンタリーとしての企画に乗った形でスタートしたという事らしい。(本来スチールカメラマンの石黒氏がこの映画に参加したのも、映画の形態をぶち壊したい、という今村昌平の意図があったらしい)だが、今村は最初はあまり乗り気ではなかったらしく、撮ってゆくウチにやはりフィクションとしての要素がこの映画には必要ではないか?という自問自答に悩み、途中2日ほど監督自身が「蒸発」したりして・・という裏話が面白かった。
結局映画とか映像というのはどこまではフィクションで、どこまでがドキュメンタリーか?というのな非常に怪しい所である。カメラを向けた時点で、それはもう「日常」ではなくなってしまう訳で、どんな映像も編集された時点で、それはフィクションだとも言えるだろう。だが、フィルムに定着しているモノは宇宙で一瞬しか起こりえなかった事である、という意味では全ての実写はドキュメンタリーだとも言える。問題は今、カメラがこれだけ氾濫している世の中で、新しい映像の在り方が問われている事だと思う。そんな事を再認識させられるのも、この作品が未だに強烈な説得力を持っている証拠に他ならない。
写真はトークショー中の武重邦夫氏(左)と石黒健治氏(右)